東京地方裁判所 昭和45年(ワ)11576号 判決
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〔判決理由〕建物保護法第一条が賃借人において地上に登記した建物を所有することをもつて土地賃借権の登記に代わる対抗事由としている所以のものは、当該土地の取引をなす者は地上建物の登記名義により、その名義者が地上に建物を所有しうる土地賃借権を有することを推知し得るが故である(最高裁判所昭和四一年四月二七日判決)。右の趣旨からすれば、建物に表示の登記だけしかない場合であつても表題部所有者欄に氏名の記載があれば(それが権利者による積極的な登記申請に基づいてなされた登記であると、職権をもつてなされた登記であるとを問わず)第三者は当該土地の取引をなすに当り、登記簿を参照すれば土地賃借人の存在を予測しうるから、不測の損害を被ることはないわけであり、しかも表題部の所有者の記載は、表題部の他の部分の記載とは異なり、所有者(又はその持分)の変動を表題部自体の変更登記手続をもつてなすことが許されず、表題部の所有名義人(又はその相続人)は容易に所有権保存の登記をなし得るも、別人が右保存登記をなすためには不動産登記法一〇〇条二号もしくは三号の規定によつてのみこれをなし得るのであつて、その手続は厳格であり、このように、表題部の所有者の記載は必然的に或程度安定性と確実性が保障される結果となつており、その他建物保護法の趣旨等に鑑るとき、当裁判所は、結局建物に表示の登記があれば土地の賃借人は賃借権を第三者に対抗しうるものと解するものである。換言すれば、事は建物保護法一条にいう「登記シタル建物」の「登記」に関する解釈問題であり、表示登記自体に対抗力を認めようという見解に立つものではない。 (安井章)